本丸より (23)

12.12.12

108ROSE

 

Sorry seems to be the hardest word

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まだ、大学の寮に暮らしていた頃、花屋から届いた薔薇は、
私が今まで貰ったことのある花束の中で一番大きかった。
ルームメイトの女の子達が歓声をあげる前で、私はひとこと、
「捨てて欲しい」と言った。
驚くルームメイトと友人は、送り主に腹を立てていても、
花には罪はないと言っては、私をなだめた。

私はすぐに受話器を鷲掴みにして、そして、
送り主を怒鳴り付けた。
私は、花を受け取って、あれほど悲しかったことはなかった。

私達は、別れた恋人同士だった。

薔薇の大きさと比例するように、
そこには怒鳴り付けるだけの、大きな理由があった。
今更それを述べる必要はないけれど。

薔薇は結局、捨てるくらいならということで、
皆が見て楽しめるようにと、共同で使っていた居間のテーブルに飾った。
ルームメイトのフランス人が「アン、ドゥ、トロワ」と、
薔薇の数を数え始め、『108本』と言った。

煩悩と同じ数の薔薇を贈ってきたその人は、
私のこころにそれ以上の傷を残した。

「ごめん...」
その一言が胸を貫くことがあると、
あなたは、こころから真っ赤な血が流れ出ているのが見えないから、
そんなことが言えるのだと、泣きながら訴えた。

と、そんなに悲しいことだったのに、
『よし、婆さんになった時、若い頃はこんな花を貰うくらいモテテいたと
孫に自慢するために証拠写真を残しておこう』と写真に撮った。
若かったし、ばかだった。

あの頃、私はよく泣いた。
一生分泣いたような気がしていたけど、
そうではなかったんだなと、泣く度に思う。

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"What have I got to do to make you love me
What have I got to do make you care
What do I do when lightning strikes me
And I wake to find that you're not there?"

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